「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「二人ともそれ位にしないとみんなひいてるよ」



朝稽古をしていると佐助が苦笑しながら間にはいる。うっとおしいのでそれごと殴り飛ばすと縁側に置いていた手拭いに手をかける。と、影。影の主を見ると右目がドン引きしたような顔でこっちを見る。失礼なやつめ。



「奥州では私のような女はいないか?」
「…いねぇな」
「そりゃそうだろ。私も他に見たことない」



縁側に座ると、幸村がやって来て何か叫ぶ。うるさいなと言って近くに置いてあった石を投げる。ああ、当たった。流石私。
そんなことしちゃ駄目でしょっと佐助が叫ぶ。お前は幸村の母親か?というと右目に普通は言うだろうといわれる。このや○ざめ。



「で、主は?」
「政宗様は」
「hey!呼んだかよ」
「呼んでない。話題は先端に上っただけだ」
「つれねぇな」
「つれねもつれないもないだろう?大体私は」







と言った瞬間だ。



体が硬直した。


その妙な動きに気がついた伊達殿が何か言うが私は自分の視線先の方を見て冷や汗まで出てくる。






「奥方様っ。おはようございまする」
「幸村おはようございます。性が出ますね」
「はっ!」
「おおおおおおおおおお母上さまっ!」
もおはよう」
「わっ私、ちと所用を」
「待ちなさい。」
「ひっ」
「何度言わせればわかるのでしょうね、婆や」
「おっお許しくださいっ!!!!!!」
「さあ、まずは湯浴みですね」
「ごめんなさいっ」
「おい…どうしたんだ」
様が唯一敵わない方でござる」
「あいつがか?」
「あの方はお館様のご正室でござる」
「ふーん。」
「取り合えず伊達の旦那。後一刻もすればいいもの見れるぜ」
「は?」













そんなやり取りしてるとは知らず。拘束が解かれたのはそれから一刻後。
ばあやめ。嬉々としやがって。お母上も楽しそうに。まぁ、もう嫁いでいない女の子は私ともう一人だけだから…。でもだ。私にこのような事をしても仕方がないだろうと思いながら幸村たちがいるであろう部屋へ行く。







まぁ、なんだ。そんなに驚かなくて良いだろう。というか、驚くな。無性に腹が立つ。
じとりと睨むと幸村がお似合いでございまするぅぅぅぅぅぅぅとKY発言を叫び始める。





「っち。この姿じゃなかったらぶっ飛ばしてやるのに」
様!?」
「Hey。
「なんだ、伊達殿。その前に誰が呼び捨てにしていいと」
「じゃあ俺も政宗でいい」
「政宗様っ!!!」
「結構だ。伊達殿」
「coolだねぇ」
「元親とよく似てると思ったが…やっぱり違うな。あれはここまで軟派ではない」
「元親?」
「長曾我部元親だ。やっと文が来てな」
「長曾我部殿はなんと?」
「知らないな。まだ読んでない。…で話はなんだ?先ほど言いかけただろう?」
「良く似合ってんなとおもってな」
「痴れ言を。そういうのは町娘にでも言えばいい」
「Ha!言いたいことはいう性格でな」
「良い性格だけどな」
「じゃあ。いいついでに」
「なんだ?」













俺の嫁にならないか?と隻眼の痴れ者はいう。
右目を見てみろ、魂が抜けているぞ。あと、幸村五月蠅い。何が破廉恥だ。お前の頭の中が破廉恥だ。何を考えている。何を






「どうだ?」
「断る。」
様…少しは恥じらいながら言いなよ」
「無理だな。佐助、お前が私の性格をよく知っているだろ」
「Why?」
「why?奥州の方言か?何故って言っているのか…そうだな。戦略結婚がしたいのか?」
「NOだな」
「私もだ。」




そういうと目の前に隻眼のアップになる。なんだこいつ。動けるならとっとと戦に出るなり国に帰れと言おうとしたが取り合えず辞めておく。
一応一国一城の主で今は客人だ。


「大体伊達殿。跡取りが必要だろ」
「no problem!てめぇさえ手に入れば」
「必要ですっ!!!」
「流石顔に似合わず真っ当な右目だ。とりあえず主君にとの事を叩き込ませておけよ。国が滅ぶぞ」
「そうだな」
「stop!それが何のproblemになるんだ」
「私には子供が出来ないよ。伊達殿」
「は?」
「そういうことだ」
様っどちらへ」
「気分を害したからな。誰かに当たってくる。…佐助来い」
「誰かじゃないでしょぉぉぉぉ」
「じゃあ、幸村。」
「御意!我が姫様の申し付けならばこの幸村たとえ火の中水の中っ」
「よし。じゃあ行くぞ」
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

















02.紅の若姫と青の隻眼








「sorry」と夕餉の時間に言われたので眉間のしわが寄る。
何故か父上の命令で伊達殿と右目と共に食事をとっている。
嫌がってくれればいいもののすんなり受け入れやがったものだから私はここで毎食必ず取っている。


「なにがだ?」
「…」
「ああ。子の件か。」
「yes」
「別にかまわんさ。イラっとはするが仕方あるまいて」
「で、なんでだ?」
「私はな幼子の時は病弱で母にも疎まれてな。何度か殺されかけてな、その時の毒の性でな。」
「…」
「ああ、今の母上ではないぞ。あの方は私を救ってくれた方の1人だからな。だから」
「頭があがんねぇのか」
「ああ。」
「まぁ、子作り何ぞ本気でしたことないからな。確実ではない。医師もそういっているが。まあなんだ。そういうことだ」
「そーかよ」
「これくらいでよかろう?飯がまずくなる。」
「OK…決めたぜ」
「何をだ」
「俺はお前を嫁にする」
「何をいうか。頭が湧いたか」
「Ha。いっとけ。」
「みろ。可哀そうに右目がくたびれているぞ」
「Hey小十郎」
「御馳走様。ばあや。とっとと帰るぞ。この化粧と衣装から早く解放されたい」
「hey!!!返事は」
「御免蒙るだ。」








パタリと閉めるとぎゃあぎゃあと右目の叫び声。流石にキレたか?仕方がない。キレてもう二度とこんなこと言わないようにしてくれ




「ふふふ」
「どうした?」
「こんなに口が悪くて、男か女かよく分からない身なりをする方なのに」
「貶しているのか」
「いいえ。よくおもてになります事」
「誰がだ?」
「伊達の殿様に長曾我部様。隻眼にもてますな」
「なんだその分け方は。大体モテておらんぞ。あれは興味や好奇心の類だろう」
「まぁ姫様はご自身が思われている以上に魅力的なのでございますよ」
「ははは。惚けたか」
「まあまあ。そのうちばあやに白無垢姿を見せて下さいませ。」
「ではばあやは長生きできるなぁ」












そういうとばあやは老人特有の柔らかい笑い声をあげる。
私はその声を聞いてふふふと笑い「湯浴みに行く」といてばあやから離れる。






ふと空を見る。真っ暗な空に砂金のような星。






その中に悠然と輝く月。その光にすら眼がしみた。