「strewth!! 襲撃だと?」
「急ぎますぞっ!」
「shit!あの人はまだあきらめてないのかよっ」
今回の祝言に際しては伊達の国境内の寺で武田の従者から伊達の従者に交代して城に入ることとなっていた。史上最強の女武者。それがあいつの通り名でそれを警戒したあの人方の申し出だった。
案の定と言えばいいのか。今襲撃いるとの知らせを受けそちらへ向かう事となったのだが
「遅いな」
「…」
そこにいたのは白無垢とは名ばかりの赤い着物を着た女がひとり、境内の外で待っていた。
06.紅の若姫と青の隻眼
「伊達殿。祝言の前に会うのは禁止されているはずだ」
「honey、つれねぇこというな。怪我は」
「有るように見えるか?」
「見えないな」
「だろうな。さあ、右目。」
「なんで俺の馬に乗らねぇ」
「は?乗る?何を言っている?どけ右目」
「なっ!?」
取り合えずだ。よかったのは武田の兵を返した後だったこと。とりあえず無事で国境をこえたはずだと祈りたい。心配していてもらちもあかないとは分かっている。とりあえず城に向かうしかないのだから。そんな気持ちで誰かの横に乗るのは好ましくない。
ので右目の馬を奪いそのまま乗っていると下から横から叫ばれる。
「五月蠅いな。」
「退きやがれっ!俺の馬だ」
「右目よ。私は恐れ多くも主の正室になるのだがな」
「まだ違うからな」
「そりゃそうか。伊達殿」
「なんだ?」
「取り合えず馬は借りる。白無垢はどうする?祝言までに間に合うと思うか?」
「新しいのなら間に合うだろ?」
「…それでは意味がない。右目」
「わかった。間に合わす」
「寺で着替える。この国を少し見たい」
「Hey!…なんでだぁ?」
「少しは女心をお学びなさい」
「HA!俺がもてるの知ってるだろ」
そういうことは大声で言うべきではないな。とため息をつきながら馬から降りて着物を探す。取り合えずだ。普段着でいいだろう。(その間中伊達の色男ぶりを聞く羽目になるのだが)
そうか、やはりモテるか。と少し呟いて男物の着物に着替える。やはり、これが楽だ。
血糊を水で除けるのはどこかの川で除けるか。流石に境内をこれ以上血で汚せない。着替えがいるな。持って行くかと用意が終わった瞬間まだきれてなかったのですか?との叫び声。右目よ。そういうことはこそこそ言うものだ。
「Shut up!」
「大体、あなた様が無理をいてこのような」
「…すまないな。馬は借りるぞ」
「っ!」
「伊達殿。別段誰ともきれずにいておいてくれてもいいぞ。私はいわば人質だからな」
「ちょっ!」
「右目もだ。別段内密にするほどのことではないが、人目というものがある。少しは静かに言え」
「…聞こえたのか」
「モテるというところからな。ではまた後でな。」
馬を走らせる。罵声と言うか奇声と言うかよく分からない声を聞きながら私は川を探す。ばしゃりと水を浴びたい。頭から浴びたい。
解っていたことだ、ここでは私は人質。それ以上でもそれ以下でもない。感情を出すな。すべて国の為にとそれだけ思えばいい。そうすれば思い出だけで生きてゆけるだろう。
ちゃぷりと水面が揺れる。馬の嘶きが聞こえてそのままそちらへ顔を向ける。
なんともいえない男が一人馬に乗ってこちらをにこにこ笑ってみている。たぶん笑ってやがる。まぁ、なんだ。あの主あってこの従者。なんなのだここは?
「つめたそうだね。寒くない?」
「そうだな。寒いが、仕方がない。血まみれだと皆引くだろ?」
「そりゃそうだけどさ。」
「大体人の裸見ておいて。少しは恥じらえ」
「は?それって君の役でしょ」
「…そうだな。でるぞ」
「えー。さすがにそれはまずいでしょ」
「ならそこを退け」
俺が敵だと思わないの?と尋ねられて鼻で笑う。とりあえず着物を羽織り袴をつける。
ここの全てが私の敵だろう?と言えばそういう意味じゃなくてさと返ってくる。
「ならどういう意味だ?」
「ほら、襲撃した奴の仲間とか」
「殺す気ならとっくに殺してるだろ」
「そっ…か」
「大体、私は全身が武器だ。裸だろうがなんだろうがそう容易く討たれんさ」
「凄いな。梵の奥方。」
「は?梵?ああ、伊達殿の御幼名か」
「そ。」
「ということは、伊達の側近か血縁者か?」
「親戚。梵からいろいろ聞いてるよ」
「そうか。とりあえず、着替えてる間でも普通に話したな。」
「あはは。裸は見慣れてるからね。もっと食べた方がいいよ」
「五月蠅いな。」
「でもある意味肉体美だよね。無駄な贅肉ないし」
「…よくもまあ、隅々まで見たな。取り合えず退け」
「はいはい。あっ、俺は成実。伊達成実」
「私は武田だ、成実殿」
「なに?」
その手はなんだと言ったらはははと笑われた。笑い流されたと言ったほうが正しいだろう。
…慶ちゃんタイプか。仕方がない
「成実殿」
「なに?」
「ここで埋められるのと流されるのとどちらがいい」
「は?」
「裸を見た代償だ。安いものだろう?」
「ちょっ。待てって。そうだ。おしいもの食べさせてあげるから」
「すまないが、育ての母からは知らぬ者についていくなと言われているからな」
しってるでしょぉぉぉぉぉぉぉと叫ぼうが喚こうが知っちゃこっちゃない。
取り合えず即殺しないだけありがたいと思ってもらおうか。
(まぁ、裸なんぞみられても減るものじゃないしなという彼女)
(ならこんなにボロボロにしないで頂きたい)