「様は寝てて下さい。」
「いや…殿が起きるまでいよう」
「倒れますぞ」
「小十郎こそ、寝ろ。お前がいないと政務が」
「2人とも寝なさいっ」
「しかしだな」
「ね な さ い」
「「…はい」」
では1刻だけと言って2人してその場を立ち去ったのがまずかった。後から聞いた話見計らったかのように側室がやって来てけたたましく叫びながら全てを枕もとで話してしまったらしい。そして、殿が起きて。すべてが露見したと、まぁ、滑稽な悲劇になってしまった。
「」
「…と……の?」
目を覚ますと血の匂いがした。そして布団の中で抱きついてくる殿がいる。はて、私はどこで寝ている?と思って頭が覚醒した。ガバリと起きようとしたが、彼の腕で抑えられていて無理だったので顔をそちらへ向ける。それも無理か。表情は分からないが状況は何となく、理解する。
「お前もか?」
「誰を殺した」
「様っ!!!政宗様が」
「小十郎」
「GET OUT!!!!!」
「私は大丈夫だ。…丁重に弔って差し上げろ。」
「…政宗様。良いですか?」
「小十郎…云う事を聞け」
「あなた様をお助けしたのは私でも医者でもありません。その方ですぞ」
「小十郎。行け。他言するな。いいな」
「は」
足音が遠のく。行ったかとぼそりと呟くと体を抱きしめる腕が強くる。
「面倒だから話し方を代えさせてもらうぞ。あれは話ずらい」
「…」
「誰を殺した」
「…弟と側室だ」
「母御は?」
「成実に止められた」
「何故側室を殺した?」
「…あいつら通じてた」
「そうか…馬鹿で愚かで可愛らしい人だった。お前がああなってしまって、どうしようもなくすべてを話してしまったのだろう」
「…なんでだ」
「何がだ?」
「なんで俺を助けた」
「は?」
「お前は俺のことが好きじゃねぇんだろ」
「…」
「Do you hate me?」
「大切な事を横文字で言うな。分からん」
「お前も俺が憎いんだろ」
「はは。直球だな」
「答えろ」
「憎いとも嫌いとも分からん。まあ、先までは奥州全てが憎かった。私から武田を取り上げたからな。だが、それも違った。私は武田が大事だ。でも、奥州も同じくらい大切になる。そういう気がした。それを教えてくれたのがここの民だ。」
「…」
「大体、よく話した事もない男に対して好き嫌いなんぞ解るか?私は女らしい部分がかなり欠落しているからそういう機微は分からん。ただ、お母上様とばあやがな『大丈夫だ』というものだからな。なんとなく大丈夫のような気がする。まあ前会った時に同じ苦しみを知っていると思っていたからな。この男に嫁いでそのうちでいい、私なりの妻であり正室が出来ればそれでいい。今はそう思っている。」
「…」
「寝たか?寝てろ。私も眠い。」
「」
「起きてたか?」
「おまえは」
「泣くなよ。寝巻が汚れる。」
腕の力がゆるんで体をこちらに向かされる。ああ馬鹿な男だ。
「後悔しているのか」
「…no」
「それでいい。後ろを見るな。前だけ見て歩け。それが一国を担う重みだ。」
「ああ」
「見えない右は小十郎が担う。後ろは私が守ってやろう。」
「…」
「なんだ?その顔は。」
「女に守られる趣味はねぇ」
「なら守られなくなるように強くなれ。私はその日まで待ってやる。」
血まみれで。髪も何もかもぐしゃぐしゃで色男も台無しな格好をしているのに。
この姿がこの表情がこの男の元の様な気がした。
「The best and most beautiful things in the world cannot be seen or even touched. They must be felt with the heart. However, I do not understand it where there is my heart. So I touched a lot of person's most beautiful things at random.
But there was NO it to me. You...Are you a person teaching most beautiful things for me? Are you the only figure?
I want you to love me. I want your love.」
「長い。長い上に何を言っているのか分からん。」
「今はわかんねぇでいい」
「大切な事は横文字で言うな。なんとなくでも理解できん。」
「」
「大体だ。人の寝床を血まみれで入ってくるな。普段してみろ。埋めるぞ」
「HA!MADな嫁さんだ」
「誰が嫁だ。」
「違うのうか?」
「さてな。」
とりあえず今は寝ろと言うと人の首筋に頭を埋める。猫かお前はと言えば色気のない女だと返されとりあえず腹を殴る。
「。」
「なんだ?」
「そのままでいろ。」
「あ?」
「しゃべり方だ。お前の楽な方でいろ。」
「外聞が悪かろう?まぁ、服は喜多に言って止めてくれ。あれは寒い」
「No problem あのままがいい。あれだけそのままでいろ」
「なんだそれは」
「主命だ」
「ちっ」
「今、舌打ちしたろ」
「してない。」
「した」
「文句があるなら自分の部屋へ行け。血生臭くてたまらん」
「やだ」
「なら黙って寝ろ。まだ普通は安静にする時だ。」
「OK.honey」
再びギュッと抱きしめてくる。寝ぐるしいが、仕方あるまい。とりあえず私も目を閉じた。
11.紅の若姫と青の隻眼
「でだ。なんでいる?」
「何がだ?」
「私と一緒に夕餉を食べるのだ?」
「いままで食べたことねぇだろ?大体小十郎と喜多はいいのかよ」
「私たちは今までご一緒に食べていましたよ。ね、小十郎殿」
「そうですな。もう一月以上になりますな」
「…俺はしらねぇ」
「それはな。今までお前が外で遊んでいたからだろう」
「……まぁ、それはいいとして」
「…何がいいのですか?」
「これ食ってみろ」
「ん?」
「ほら」
「ああ、旨いな。賄い方に腕のいい職人が来たのか?」
「いいえ。来ておりませんよ」
「小十郎か?」
「違います」
「…その敬語どうにかならんのか?」
「もうこちらで対応させて頂くと決めましたから。」
「この頑固者め」
「Hey!どうだ?」
「旨いが…誰が作った?」
「俺だ」
「…とうとう、頭まで湧いたか」
「俺の趣味だ」
「本当か?」
「…なんだよ」
パクリともう一度食べる。横には不貞腐れた男。どこの世界で戦場が好きで包丁持つのが好きな男がいる。この二つは両立せんだろう?と思っていたが実際美味しいので何とも言えなくなる。
まぁ、あれだ。それ以上機嫌を損ねるのもあれだ。
「旨いな。」
「…」
「私の好きなものばかりだ。」
「…そうかよ」
「なんだ。調べたのかと思ったのだがな。」
「…」
「ありがとうと言おうと思ったが当てが外れたな」
「…まぁ、あれだ。偶々だが。」
「そうか」
「ありがとうって言うのはもらっといてやる。」
「そうかそうか」
(完全に尻に引かれているな)
(賄い方を脅してまで作ったのに…素直じゃないわね。)
「じゃう今日こそ」
「…殿」
「なんだ?」
取り合えず殴ってやったのは仕方がないことだと思う。
(現に喜多もなにもいわないものな)