「政宗様っ!?様???」
「凄い…夫婦喧嘩ね」
「取り合えず…」
「料理しましょう。夕餉前でよかった。ああ。ご老人に持って行くように言ってたわよ」
「ああ。」
六刀を抜く殿を尻目に仕方がないと私は構える。熊を運んでいた竹の棒をとりあえず持ってくるくると回す。少し長いがまぁいい。取り合えず一撃さばけれたらそれでいい。元々槍を使っていたから上手くいくか?頭の部分が軽いのが少々気になるがと思っていたらいきなり大技でやってくる。せっかちな奴め。
「いい加減にしやがれっ」
「何がだ」
「てめっ!!!」
がきりという音がいる。とりあえず3本は竹で抑えられるが残りはよけて足で止めるしかないな。まぁ、何だ。すごい刀の使い方だなと思いながら横っ面に蹴りを入れる。が寸で出避けられるので肘を入れる。おお、これも避けるか
「あぶねぇだろ」
「その言葉そのままそっくり返してやろう」
「っち」
「おっ。本気で殺す気か?」
「これくらいで死ぬ玉じゃねぇだろ。ぐぁっ」
「おお。それは入ったか」
「goddam!」
「まだまだ。よっと」
「っ」
「なんだ?」
「うおっ!お前」
「どうした?」
本当に女かと尋ねられたのでお前より年下の女だかと答える。案の定、隙が出来るのでそこへ付け込ませて頂く。おっと。あまり間を詰めすぎると良くないなと思いながら後ろに下がる。
「shit!お前絶対女じゃねぇ」
「ははは。そりゃ残念だ。私は女だからな」
「wow!」
「隙あり!」
右腕に蹴りを入れる。と三刀落としたのだが…なんだあっさりしすぎている。まずいなと思った瞬間にはもう遅くて足首を掴まれてそのまま地面に叩きつけられる。
痛いなと言おうとした瞬間胸倉を掴まれてそのまま地面に縫いつけられる。眼だけで相手を睨む。本来ならここでいくらでも反撃できるのだがここで止めておこう。これ以上は無駄だ。と思って私は殿とだけ呼ぶ。
「捕まえたぜ」
「今日は私の負けという事にしておこう。…退け」
「いいや、駄目だ」
「は?」
良いか聞けよと殿は私に馬乗りになって叫ぶ。叫ぶな唾がかかると言えばsh...!と子供のように云う。仕方がないと腕に込める力を抜くとgood Kittyとまた横文字で言われる。だから何なんだそれは?
「俺はお前だけいれば良い」
「は?」
「 I love you」
「だから横文字は分からん」
そう言ったら舌打ちされた。なんなんだ一体。不機嫌げに眉間に皺が寄ったかと思うと見る見るうちに不敵な顔になる。嫌な予感がする。
「」
「…なんだ?」
「愛してる」
「ついに頭が湧いたか?」
「…前言ったやつ覚えているか?」
「なにをだ?」
「The best and most beautiful things in the world cannot be seen or even touched. They must be felt with the heart. However, I do not understand it where there is my heart. So I touched a lot of person's most beautiful things at random.
But there was NO it to me. You...Are you a person teaching most beautiful things for me? Are you the only figure?
I want you to love me. I want your love.」
「ああ。呪文みたいなやつな。覚えているわけないだろ?」
「意味知りてぇか?」
「嫌いい。」
「教えてやる。」
「結構だ」
「世界で一番良くて美しいモノは目に見えず、触ることもできねぇ。それらは心で感じ取られなければいけない。だが俺は自分の心がどこにあるのか知らねぇ。だから手当たり次第に一番良くて美しいモノってもんを触ってたんだ。だがよ、俺にそれを教えてくれる奴は全くいなかった。お前は…」
「長い。上に訳が分からん」
「良いから最後まで聞け。…一番良くて美しいモノを教えてくれる人なのか?たった一人の女なのか?」
「…おい」
「俺は」
「もう言うな」
「お前の愛が欲しい。愛してほしい」
頬にぽつりと一滴落ちて消える。馬鹿な男だ。
愛なんて一番良くて美しいモノって言うのはただの言葉じゃないか。
本当に欲しいものは違うのだろう?
そう思いながら私はギュッと抱きしめてやる。頭をなでてやる。そして馬鹿ものがとただ一言漏らす。
「お前、自分の心の場所とっくに知っているのだろ?」
「…」
「大切な仲間がいて傷ついたら痛む所、皆で馬鹿騒ぎしている時に晴れやかになる所。」
「ああ」
「知っているのに何故そんな事を云う?」
「その心じゃねぇ。領主としての心じゃねぇ」
「?」
「俺の中の最大単位はこの日の元とだ。天下を取る。それは領主としての伊達政宗の望みだ。」
「訳が分からん」
「俺の中の最小単位は俺一人だ。普通の幸せを望んでる普通の男だ」
「?」
「愛したい女と共に生きて死にてぇって願ってる。」
「…」
「それがお前なんだ。」
「…」
「だから俺とお前の間に出来たガキしかいらねぇ。俺は欲しくねぇ」
「…」
「だから側室を持てなんて言うな。」
「…殿」
「?」
「私はな。こんな女だ。今から変わろうとも思わない。だがな、心はある。」
「ああ」
「あの日。初めて目を覚ました時に佐助と政宗の顔を見た瞬間本気で信州に帰りたいと思った。香の匂いがした瞬間私がいくら正室然としていても無駄だと思った。だから私は私のやり方で正室としてお前の後ろを守ろうと…そう考えた。それで私はお前のそばに居ようと思った」
「…」
「だがな一回りも上に見られていたんだ。今まで相手をしていた女と比べられていると思ってな心底自分が馬鹿だという事がわかったよ。私は女として見られていない。」
「それは違う」
「私は女でもなくなったんだから一武士としてお前のそばに居る。そうでもしないともうこの心はボロボロになりそうなんだ」
と言いながら自分が涙を流している事に気がつく。だが、拭いたくとも拭えん。拘束したての力が増してきてぎりりと言う音をさせる。痛いと言うが殿は顔を伏せたままこちらを見ようともしない。
「それでだめなら武田に返してくれていい。同盟も好きにしろ」
「 …まれ」
「?」
「黙れっ!一武士?俺が言ってる事聞いてたかよ」
「聞いた。だが一生私だけ愛せるか?一時の言葉を喜んで裏切られたら私は…死んでしまう」
「信じねぇのかよ」
「今までの行いを考えろ」
「俺はっ」
「なんだ」
「例えお前が皺くちゃ婆でも喋れないくらいのガキでも愛してるっていうぜ。」
「…変態め」
「shucks!少し黙れ!!!お前が先に死んでも絶対他の女になんか手をださねぇ。来世ってもんがあったらそこでもお前を見つけて愛せる自信もある。記憶がなくても絶対思い出してお前を見つけ出す」
「…無理を言うな」
「shit!例えお前が男で俺も男だったとしても絶対振り向かす」
「…」
「俺はお前が好きなんだ。もうこの感情を知っちまったらお前以外愛せないんだよ」
「…殿」
「もう止まんねぇんだよ。もう俺の心がぼろぼろだ」
といた瞬間なぜか心のつっかえが取れた。多分こいつの目のせいだ。惑わされるなという自分と信じてみろという自分。2人がせめぎ合うが…もう心はきまっている。
「おい」
「なんだよ」
「私の知らないうちに浮気してみろ…二度と種まきが出来ない体にしてやるぞ」
「そんな事になんねぇよ」
「ただな」
「なんだよ」
「期間を設けて子供が出来なかったら…頼む。側室を持ってくれ」
「てめっ」
「私はな」
「あぁ?」
「この国が好きになりつつある。」
「それがどうした」
「だから世継を作らないといけないんだ」
「…」
「なにより」
「…おい」
「お前の子どもを抱きたいんだ」
「Don't cay.」
「だから頼む」
「わかった」
「…」
「2年だ…それ以上は短くしねぇ」
「ああ。」
「それまでに出来りゃ良いんだよな」
「ああ?なんだこの手は」
「取り合えず励むぞ」
そういって腰に手をまわす。さっきまでの男とは同一人物だと信じたくない。
(まずは精を付けて下さい!!!と叫ぶ片倉兄弟もどうにかしてくれ)
13.紅の若姫と青の隻眼
「取り合えず」
「あ?」
「早く床から出ろ。朝だぞ」
「…何で元気なんだよ。大体初めてでもねぇし」
「初物が良かったのか?…そういうものを探しておくか」
「F××K!黙らされてぇのか?」
「あの程度で私を黙らせられるとでも?」
「っ」
「もっと励めよ」
といいながら寝巻から着替える。横には煙管をかじりながら不機嫌な男が一人。
相当自信があったのか?と聞けば黙れよっと返される。可愛くない。
「誰だよ」
「あぁ?」
「お前の初めての奴」
「聞いてどうする」
「殺す」
「なら言えんな」
「武田の者か」
「違う」
「じゃあ」
「…ではお前の今まで相手をした女の名前を正確に全員言えれば言ってやろう」
「けっ」
「嫉妬しても仕方がないだろう」
「…」
「いいか」
「なにがだよ」
「一度しか言わんぞ」
「あ?」
愛しているというと煙管を落として布団に穴を開ける。馬鹿だなと笑うと耳まで真っ赤な男が再び煙管を噛み始める。
幸せかと聞かれればわからない。現に戦火は東へ近づいているしいつまでここもこう平和なのかも分からない。が、そんな暗い事ばかり考えていても仕方がない。
『大丈夫ですよ』
ばあやがよく言っていた。案外全てうまくいくかもしれんなと心の中で思いながら私は殿と呼ぶ。赤い顔を見られたくないのかこっちを向かずなんだとだけ声がする。
「幸せか?」
「ああ」
「そうか」
「お前は」
「幸せだな…」
遠くで小十郎と喜多の声がする。ふふふと笑うと殿が後ろから抱きしめてくる。少しタバコ臭い。抗議しようかと思ったら…やめた。ああ、こんな時間がずっと続けばいい。
(愛してるとあなたが耳元で囁くから私まで赤くなってしまったではないかっ!)