いちばん最初

初めて彼に会ったのはもう何年も前の話で。




私はただただ彼のことが嫌いだった。





のに…














01 君を想う気持ちに迫られて気がくるいそうだ なんとかしてくれ神様












こんにちはと声がする先を見つめれば
このジムには不似合いな女性が静かに佇んでいて

一瞬声を失ってしまった。


「こんにちは。」
「あっはい!!!」

一瞬びっくりして彼女は形の良い眉を少し下げて「木村さんいらっしゃいますか」と聞いてく る。







「木村さん?」
「はい。達也さんのお母さんに頼まれ物をしまして」
「ちょっと待って下さい。あっ今ロードに出てるんだ」
「…」
「青木さんも鷹村さんも…どこ行っちゃったんだろ」



一人わたわたしていると彼女は「ごめんなさい」と言いながらくつくつ笑い始めた。



「えっ!?」
「幕の内さんって兄さんたちに聞いた通りの人で、すいません。初対面なのに」
「いえっ!!!それより"兄さん"?」
「達也さんと勝さんは幼馴染で。私一人っ子だったから」
「そうなんですか」


はいそうなんですと彼女は言い、いろいろ伺っています。とも付け加えた。
(絶対ロクでもないこと言ってる!!!)


「待たせて頂いてもいいですか?」
「はい」






すいませんともう一度困ったように頭を下げ奥のベンチに腰を下ろす。





「あっすいません」
「はい?」
「雨竜」
「雨竜?」
「雨竜と申します。」
「まままま幕の内一歩です」
「二人から伺ったのですが同じ年なのに日本チャンプってすごいですね?」
「はい?」
「私と幕の内さん同じ年なんですよ」






















「え?」














かなり空いた間に傷ついたのか
少しほほを膨らませてひどいと雨竜さんがいう。










「どうせ老けて見えますよ」
「いやっ!!!違います違います!!!」
「だってあの間!」
「いえっ!!!」
「幕の内さんの馬鹿」







(馬鹿って…かわいいなぁ)


って違う違う!!!



「雨竜さんは綺麗で美人で!」
「え?」
「大人っぽくて…そんなきれいな人が僕と」








同い年だなんてと言いかけた瞬間
肩に重い何かが圧し掛かる。






「僕と…なんだって?」
「俺らの可愛いに手ぇ出そうなんざ百万年はぇえ」
「木村さん…青木さん…」








天国から地獄




今僕は落ちた。真っ逆さまに突き落とされた。







「兄さんっ!!!」




天の助けと思った瞬間
2人は見たことないスピードで雨竜さんの元へ飛んでいく。

(この人たちは)






「幕の内さんは私の相手をしてくれたのよ」
「そーかそーか。」
「でもな。前から教えてやってるだろう。男はみんな狼なんだ」
「勝兄さん…」
「あー見えてもあいつは」
「あー!!!あー!!!あー!!!」




絶対ロクでもないこと言ってる。


二人に怒っていると彼女は又綺麗な顔でくすくす笑った。



「雨竜さん」
でいいです。私も一歩さんって呼んでいい?」
「はい」








天国だ。
こんな可愛い子がいただなんてっ!!!






と思ったのもつかの間






音程をひどく外した歌声が聞こえる。






















「あっ鷹村さん」
「やばい」
帰れっ!!!」
「え?」
「お前みたいな可愛い子がこんなところにいたら危ないからな」
「勝兄さん?」
「喰われ…ぐぁあああ」
にそういう言葉を使うな。」
「達也兄さんっ!!!大丈夫?勝兄さん」
「そっそれより近づいてきますよ!!!」




舌打ちとともに
木村が抱きしめて青木が一歩とともに壁を作る。












「兄さん!??」
「しっ!」



何かの話し声と
何かがふっ飛ばされる音と









そして







?」
「え…?」


















急に高まる心臓の音








(それは私のものそれとも)