行方不明の一報が学園を駆け巡っていたらしい。


あとから聞いた話、上級生と一部の下級生による捜索隊が組まれたらしい。本当にありがたか った。でもさ、灯台下暗し。まさにこの言葉が似合う所に私はいた。
みんなはさらわれたとかいろいろ思ったらしいけど、なんてことはない。裏山にいました。わ たくし。




「いてて」


やばい足を折ったか?と錯覚するほど足首からの激痛と腕からの出血と。
塹壕っていうんだっけ。そういえば伊作ちゃんがこのあたりは危険だから気をつけてって言っ たような…。まぁ、いっか。後で怒られるかなと思いつつ頬に落ちる滴に戦慄する。
いわゆる落とし穴に落ちて身動きがきかなくなった所に雨が降る。最悪だ。私って不運だ。あ っ。確か保健委員って不運委員っていっていたような。やばい。不幸が移った。そんなのに効 く特効薬ないかなぁ。ないだろうなぁ。と思いながらとりあえず止血だけする。薬を持って来 ててよかったと思いながらもこのままなら手遅れになるかなとうっすら思ってしまう。嫌な職 業を選んだものだ。






ずきずき


脳天の髄を犯すような痛み。痛み止めが効かないな。やばい。本腰で折れてるかも。
手でさすると足首は大丈夫。たぶん捻挫だ。でも、気がつかなかったけど脛が折れてる。
痛いはずだよね。痛い。痛い。


とりあえず、支えになるものを探してずれた骨を元通りにしないと。





「ぐっ…あぁっ」




ぱきんとはいった嫌な感触と激痛。
良かった布咥えてて。ふーふーと自分の獣のような息が聞こえてくる。
脂汗と雨ともう何だかわからないけどびしょびしょに濡れた着物を切り裂いて支えの棒を止め る。


痛い
痛い






痛いよ、母上。



















そう思った瞬間、なぜか私はあの城にいた。










03.不運委員会の先生もまた不運

















『あなたは逃げなさい。この方と一緒に行くのです。』
『なぜです?母上は』
『私は父上と一緒にいます。大丈夫あなたには私たちのすべてを叩き込みました』
『母上』
『あなたはこの方の学園でひっそりと暮らしなさい。私たちの業まで引き継ぐ必要はない』






父と母は子供の私が見ても美しい人だった。
頑固だけれども聡明で正義感に溢れた二人だった。



ある城の医師として働いていたのだけれどもある日父と母は死んだのだ。
全てを隠すため。
全てを消しさるために。



全て?
そう全て。


私の一族が脈々と続けていた生業。
(ヒトトシテシテハイケナイケンキュウ)







笑いながら2人は死んだのだ。
これ以上罪を重ねないために。













でも、私はそれのすべてを受け継いでいる。


(ここで死んでしまった方が楽かもしれない)











そう思った瞬間頬に痛みが走る。









「へ?」
「このバカたれっ」
「もんじ?…あれ?ここは?」
がいたぞっ。みんなに知らせろ。」
「はい」
「っち。小平太の奴。こんなところまで塹壕堀やがって」
「母上は?父上も…」
「何言ってやがる。、ここがどこかわかるか」
「あ」








父上と母上が笑っていたのは幻か。






「う…ん。」

「ん?」
「まさかお前自分で骨接いだのか」
「うん」
「大丈夫か?」
「痛いよ。」
「…はぁ。心配させるな」
「あのさ…もんじ」
「あ?」












私何で生きてるの?
と聞いたら

もんじがバカたれと大声で叫んでぎゅっと抱きしめた。







……
………
…………あれ?







「ももももももももも」
「委員長っ」
「あー…良い子のみんなは向こう言っておこうね」
「文次郎さんっ。何なさってるの!!???!?!?」
「馬鹿野郎。」
「馬鹿はあんたでしょ。ちょっ。三木ちゃん!!!」
「先生。」
「あんたこれどうにかしなさい」
「先輩、先生見つけるのいちばん必死だったんですよ。あと、死んだと思ったんじゃないんで すか?ものすごい必死に名前呼んでたんだすよ」
「三木ヱ門っ」
「へ?」
「あんまりつれないと…おっと。」
「…」
「では。まだ私は死にたくないんで」









ぴょこりと三木ちゃんが隠れる。



なんだろうこの空気。
抱きしめられてるところが熱い。






「もんじ」
「っすまん。利吉さんがいんのに」
「は?」
「あ」
「利吉さんは私を助けてくれたお兄さんだよ」
「は?」
「だからそんな関係じゃ…何言ってんだろ私」

「ちょっ。お姫様だっこは恥ずかしい」
「黙ってろ。舌かむぞ」
「っぅ」














抱っこされたまますごいスピードで走る文次も間違いなく忍者なんだと思う。
かなり恥ずかしいけど。



(あったかい)





取り合えずだるこの振動が心地よい。
(寝ちゃえ)






ダイブする先はさっきの悲しい幸せな夢じゃなくて









みんながいる今の幸せな夢









その中でも








(あれれ、何でだろう。もんじがかっこよく見える。)
(あと、胸が痛い。なんで?)