色の授業があると聞いて、何それと私は聞いた。
聞くんじゃなかった。



本気で聞くんじゃなかった。好奇心の塊の自分が憎い。バカ私。




「色っていうのはまぁ、」
「伊作ちゃん?」
「その…ですね。」
「?」
「耳貸して下さい」
「ん?」
「あのですね」
「あはは、こそばい」
さん」

「「あ」」





いちゃいちゃしていたらもんじ改め文次郎が入ってきて眉間にすごい皺を寄せる。
怖いよ。クマとすごいシンフォニーを奏でているよ。
言いたいけど言えません。かなり怖い。伊作ちゃんははははと笑っている。すげぇな、慣れっ て。


「何してんだ」
「えー…と」
「伊作?(てめぇ。人のもんに手を出してタダで済むと思ってんのかよ)」
「あはは(ちがうよ。誤解だよ)」
「あっあのね。」
「あ?」
「伊作ちゃんに教えてもらってたの。」
「あー?」
さんっ」
「色の授業があるってくの一の子たちが騒いでるって話だったんだけど。色って何?」
「伊作っ」
「わっ私に言われても」
「文次郎?」
「っー…」
「私は向こうへ」
「色っていうのはな、男と女の話だよ」
「男と女?」
「文次郎…もう少し言い方が」
「わかったか」




もう一度男と女と反語して頬がかぁぁぁと赤くなるのが分かる。
といえばあれですよね。にゃんにゃん。死語だ。夜の営み。そう。それだ。これも死語か?
あー…これか。カルチャーショックだ。仙様が以前「処女じゃあるまいし」と言ったのは。こ ういうのも忍術なんだ。わぁ…。試験とかあるのかな。恥ずかしいなぁ。と頬を両手で覆いな がら考える。



さん大丈夫?」
「大丈夫というか…なんていうか」
「あー?生娘でもあるまいし。」
「っ」
さん?」
「?」






ここの人たちって私くらいの年齢になればそりゃ初めての人いないんだろうな。すごいな。と いうか、私の歳で子供いる人もいるし。私は勉強と修行ばっかりだったけどさ。





「どうして泣いてるの?」
?」
「っ」







なんか悔しくて。
部屋から飛び出るなんて愚行を犯してしまう。子供じゃん、私。ここには先生としてきてるの に。バカだ私。恥ずかしいことでもないのに。


ただ。








私の知らない文次郎を知っている人がいるっていう事に心から嫉妬したんだ。














「だから三禁なんだ」
「よーくわかりました。」
「まず、その汚い顔をどうにかしろ」
「仙様酷い」
「ブチブチと薬草をちぎるお前に話を掛けてやっただけでもありがたいと思え」
「うー…」
「泣きながらでもきちんとするあたりはやはりプロだな」
「手が覚えてるのよ。何万回も摘んだから」
「なるほど」



ぼろぼろになりながら薬草を摘んでいた。鼻をすすったら汚いと叩かれる。ひどい。



「仙様」
「なんだ」
「仙様も授業受けるの」
「当たり前だろ」
「相手は?」
「いろいろだ。」
「くの一の子も」
「ああ」
「なんで?」
「溺れないためだ。お互いに。」
「?」
もそのうち分かる。あの馬鹿が手を出さない理由も」
「分からないよ。つい最近もあったんでしょ?」
「ああ」
「私は知らなかったんだよ」
「嫉妬だな。ふふふ」
「笑わないでよ」
「可愛らしいんだよ。私にはそんな感情ないからな」
「そうなの?」
「まだないというべきか」
「?」
にはまだ早い」
「仙様?」
「お前はそのままでいろ」
「?」


おっとと笑う。
お迎えが来たぞっと言われるが早いか
後ろから頭を持たれるのが早いか
(恋人としてどうよ、それ。頭蓋骨が軋むっ)



文次郎あらわる。





「ももももももももももも。痛い痛いっ」
「返してもらうぞ」
「どうぞ。そんな汚い、熨しつけて返してやるさ。」
「ひどっ」
「げっ。本当に汚ねぇ」
「っ」
「あまり泣かすなよ。我らの姫君だ」
「うるせぇ。」
「(その割に扱い悪いっ)」





頭の手を払いのけて
ぐしぐし泣きながら薬草園の奥へと歩いていく。

後ろでため息が聞こえてきたけど知ったこっちゃない。
ずんずん歩いて行くと文次郎に待てと腕を持たれる。痛い。痛い。でも









心が一番痛い。







「何ですか?」
「何怒ってんだよ」
「怒ってない。嫉妬中」
「は?」
「だから見ないでくれる?恥ずかしいから」
「…」
「汚いし」





と言った瞬間自分が本当に可愛くない女だなと思う。
嫉妬と言ったのは最後の意地だ。意地。…どんな意地だよ。


きゅっと抱きしめられてびっくりした。顔が動かせないくらいぎゅっと抱きしめられる事は初 めてだと思う。いつも鍛錬だとか実習だとか試験だとかいろいろ諸々であんまりこういう風な 事はない。あんまり…ではないな。皆無だ。初。心臓が壊れたのかと思うくらいバクバクいう 。







「可愛い」
「誰?私の知ってる文次郎はそんなこという奴ではない。三郎ちゃん?!」
「…てめぇ。恋人と他人の区別持つかねぇのか」
「痛い痛い痛い!!!腕が軋むっ」
「っち」
「文次郎」
「あーなんだ」










すまねぇと耳元で言われる。
誰だ本当に。私の知っている奴はこんな愁傷なやつではない。
でも誰だとはいえない。私も自分の腕が大切だ。





「俺たちの尺で考えていたわけじゃないいんだが、」
「うん」
「俺たちとお前は違うんだよな」
「うん」
「色でお前を抱きたくないのは」
「?」
「誰にもお前を見せたくないんだよっ」
「痛っ。痛いよ。文次郎。頭っ頭。軋むよ」
「ちっとは色気のある声出せよ。」
「無理無理。痛い」

「?」
「絶対学園でお前は抱かない。」
「は?」
「もったいねぇ。絶対他の奴に見せん。わかったか」
「分かんない」
「バカ女」
「あんた校医に向かって」





はぁとため息をつかれて向い合せに抱きしめられる。
見てろよと小さくいって懐から取り出された棒を向かいの木に投げつける。








ギャーという声とともに紫と青と緑の服がぼろぼろと落ちた。

「へ?」
「てめぇらいい度胸だ。そんなに予算削られてぇかっ」
「!!???!?!?」
「先輩いいじゃないですかぁ。」
「文次だけずるいぞっ。さんさぁ私もハグっ」
「何で?みんないるの?」
「こーいうことだ。」
が生娘って知ったらみんな狙うよ。私もがんばる」
(何をがんばるの!!???)
「へっ。残念だったな。仙蔵」
「やれやれ。貸しだぞ」
「へっ」
「行くぞ舌かむな」












爆音とともに抱きかかえられて私はそのまま塀を飛び越えた。











(ごゆっくりという仙様はすべてを知っているかのごとに微笑んでいた。)
























「で」
「あ?」
「なんで慣れてるの?」
「あー…」
「ここ茶屋だよね」
「他になんに見える」
「まぁねいいけどさ(ちょっと悔しい)」
「(拗ねてやんの)」
「文次郎?」
「っ」
「へっ」
「お前が悪い」
「ええええええ?」











キスをするのはいいけれどもなんで上手いの?みんなこうなの?どうなのよとぐるぐる考えて いたらぺろりと唇を舐められる。恥ずかしい。酸欠とあいまってぼっとしてたらくくくと笑わ れる。なによときっと睨んだものの全然効果なかったらしく再びキスされる。




あれ?布団が背中にいるよ?


(ぎゃぁあああ。)




「っ」
「良いか?」
「…ぅ」
「まあ、駄目だといわれてもやめねぇけどな」
「ひんっ」

「ん…」






キスされて何が何だか分からなくなってきた。
いつの間にか着物も脱がされていて
それすら抵抗できなかったわけだけれども


「恥ずかしい…」
「あ?」
「文次郎も脱いで。私だけは恥ずかしいよ」
「…」
「文次郎?」
「っち」
(舌打ちされた)
(やばい。溺れるかも)





ばされと緑が脱がれる。



びっくりした。傷だらけだ。


「ばかたれ。」
「え?」
「そんなつらそうな顔すんな」
「ん」
「俺だけ見ろ」
「んっ…あっ。駄目」


首筋から徐々に下へと唇を這わす。体がぞくぞくと震える。それに気分を良くしたらしくにっ と笑いながら私の名前を呼ぶ。

「ん」
「絶対他の奴にはやんねぇ。俺だけのもんだ」
「うんっああ」

「ひゃっつ。胸は駄目っ。変に」

「ああんっ」
「俺だけ感じろ」
「んっ。ちょっ駄目だって。そんなところ」
「黙ってろ」





変な感じがする。嬌声が漏れる。自分が女なんだとつくづく感じてしまう。
でも









幸せなのはなぜだろう。








「んっく。あぁ。も…んじ…なんか変」
「ここか?」
「ひゃっ。だめっ」
「一回イっておけ」
「あぁあん。ひゃつ。うんぅ。もん」
(可愛い)
「あぁぁああぁぁぁ」











体が無意識に跳ねる。目の前がスパークする。

体がくったりと布団に沈むともんじが満足そうに微笑んで短いキスをする。

「もういれるぞ」
「っ。無理無理。そんなの入らない」
「いれる。力抜け」
「いったぁぁい」
。」
「む…り」

「んっ」







もう一度短いキス
そして耳元で愛してると囁かれる。




力が抜けた。顔は絶対真っ赤だ。




「ひゃっ。いた」
「入った。動くぞ」
「ああっ痛い」

「んんっ」
「っ」




段々痛いではない別の感情があふれる。


先ほどとは比べ物にならない嬌声。
ギュッとつぶった眼を薄く開けると


少し切なそうに顔をするあなたがいる。



「文次郎」
「どうした?」
「わたしも」
「?」
「愛してる」
「っ」



急に奥まで貫かれて
先ほどまでの緩い動きから激しいものへと変わっていく。




「もんじっもんじ…ろう」

「あぁああん。駄目。もう…むり」
「いけ。」
「ああっ」

「ああああぁあああああ」














目の前であなたが笑っていた。
私もそのまま笑って目を閉じた。














01.どうぞごゆっくり












「で。どうだったんだよ」
「あー…」
さんも趣味わりいな。よりによってこいつと」
「なんだとっ」
さんは?(また喧嘩始めた)」
「街で買い物をしているらしいぞ。」
「あっかえって…」
「お」
「へ」
「…」
「只今。途中で利吉さんに会ったから一緒に帰ってきたの」
「…」
「みんなしてどうしたの?利吉さんもさっきから変だし。あー…文次に留さん。喧嘩しちゃだ めよ。薬高いんだから」
「っ」
「おーおー。予算削ってるからな」
「お願いだから少し増やして」






微笑む姿が以前とまったく違っていて
なんていうんだろう







(前から美人だったけど)
(こう柔らかみ?)
(化けたか)
(ボソボソ)







本当にきれいになってと仙蔵が笑う。








「どうしたの?」
「あ?」
「いや。どうぞごゆっくり。晴れて恋人同士になったんだからな」
「っ」





真っ赤になる姿も可愛いし美人だ。見事に化けたと静かに言って優しく笑った。