懐かしいなと場違いな声が聞こえる。
何が?といえば良くこうして遊んだなとみよちゃんが言う。
みよちゃんと私は幼馴染だ。みよちゃんが3つ上のモテモテのお兄さん。私が3つ下の可愛くない妹。
そう言えばよくかくれんぼしたな。私はすぐ机の下に隠れてみよちゃんが笑いながら見つけてくれるんだ。懐かしい。
「はさ」
「ん?」
「旦那のこと自分が一方的に好きになったって思ってねぇ?」
「そうでしょ?まーもう終わったことだから」
「はずれ」
「は?」
「逆。」
「何言ってんの?惚けた?」
確かさ、学生の時にみよちゃんがからかいに来てその時4人衆とボスに会って。
その時私が一目ぼれしてさ。一生懸命アタックしたんだけどなかなか実らなくてようやく付き合っていただいたというかなんというか。
「学生の時あったと思ってんだろ」
「うん」
「大学の時」
「うん」
「はずれ」
「みよちゃん?」
外が騒がしくなってきた。どうやら私の思考なんてあっという間に読まれてしまったらしい。
ちゃんとボスの声までしてくる。仕事しろよ。仕事
「高校のときさ。お前俺の大学に来てただろう」
「うん。みよちゃんが呼んでくれたから」
「あん時」
「は?」
「あん時に旦那お前のこと好きになったんだよ」
「は?」
いつの話だ。私が一目ぼれする2年前。付き合うって話になったら4年前?
「知らない」
「そりゃそうだろ。みんな口止めされてたから」
「なにそれ」
「旦那さ、かなりの奥手で。お前と話すたびにあたふたして」
「…」
「からかいがいがあったというか」
「悪趣味」
「ここ最近忙しかったのもさ。あいつの性でありあいつの性じゃないというか」
「みよっ!!!!!!!!!!!」
ばきっという音とともに何かの破片が飛んできた。
血の気が引く。ま・さ・か。
「旦那。人の部屋の扉ブッ飛ばさないで下さいよ」
「お前いま何言おうとしてた」
「真実です」
「お前は誰の味方だよ」
「に決まってんじゃん」
「…は?」
「俺の脚元」
「それより凄い顔」
「にやられた」
「あーあー。そんだけで済んでよかったね」
「あ?」
「こいつ無茶苦茶するから。」
「知ってる。」
「泣かさないで下さいよ。俺の可愛い妹分なんだから」
ああといってひょこりと机の下を覗きこむ。
私は馬鹿だと思う。絶対許さないと思って憎くて憎くてたまらなかったはずなのに
顔を見たらホッとしてしまう。しかし、今絶対耳まで真っ赤だ。
手を差しのべられてそれを取るかどうしようか考えていたらため息をつかれる。
と私の名前を呼んでグイッと机の下から引きづり出される。
「やー!!!」
「おーおー。可愛い可愛い。」
「耳まで真っ赤だぜ」
「社長や旦那方あんまりをからかわないで下さいよ」
「なんでみんないるの???仕事してよ」
「だって鬼蜘蛛丸がいないと仕事になんないもん」
「っっっっっ!!!!!!!!!」
抱きかかえられたままぎゃいぎゃいいって手足をばたばた振る。
と鬼蜘蛛さんが呼んで
私ははなせという。
真っ赤な顔のままで。ここまで自分が乙女だとは思わなかった。
「聞きなさい」
「やだ」
「この間はすまなかった」
「鬼蜘蛛さんなんて嫌い」
「…」
「ちゃんそれ言っちゃだめだよ」
「あのあと使い物にならなかったんだぞー!!!」
「ちゃんが嫌い嫌いいうから鬼の奴見事なほどにヘコんじまってよ」
「社長っ!!!兄さん達五月蠅い!!!」
「「「「真実だろ」」」」
「はぁ。もういいです。一か月…すまなかった。なかなか連絡できなくて」
「もういいです」
「秀作君がスケジュールを無茶苦茶にしてくれたせいで。休む間というかそういうのが一切なくて」
「秀作君お前のせいかっ!!!」
「えー!!怒らないで下さいよ」
「やめてしまえっ!!!ボスのところの仙様を見習いなさい」
「あははは。怖いぞー。仙蔵わ」
「聞こえてますよ。社長」
秀作君に持っていた靴をぶつけてやるとビーピー泣き始める。
泣きたいのはこっちの方だ。
「」
「う」
「やっとの思いで仕事終わらせて君に電話しようと思ったら凄いことになってて」
「どうせ他の伝言に消されて聞いてないでしょ」
「プライベート用は君しか番号知らないよ」
「へ?」
「急いでその馬鹿を問いただして写真見せてもらって」
「…」
「追いかけたらもう君はいなくて」
「…」
「やっとの思いで見つけたら、あんな男と二人っきりだし」
「まぁ、あれは見合いですから」
「部屋に連れ込まれそうになってるし」
「う」
「…ほう」
「とりあえず」
鬼蜘蛛さんは私を抱いたままパソコンを蹴っ飛ばして(みよちゃんが叫んでる!!!)
私をディスクの上に座らせる。(あーあー。みよちゃんいろんな人に羽交い絞めにされてる。)
何なんだ。(膝まずいてらっしゃる。)
そのまま手の甲にキスをされる。(どこの国の紳士だ)
「」
「はい」
「けけけけけけけけ」
「はい?」
「……」
「鬼蜘蛛さん?」
「結婚して下さい」
「は?」
私は手を振り払えず
そのままギャラリーの方へ目をやる。
にこにこ笑ってやがる。仙様に至ってはにやりと笑っている。
「この間のイギリスへの出張の時に買った奴」
「え?」
「忙しいのに数時間悩んだやつだろ」
「あーあーあれか」
「どっちでもいいと思うけどよ」
「そうか?よく似合うと」
「頼みますからまだ渡してないから…」
「へあうあへへへへへへへ」
気がつけばすごくきれいなプラチナのリング。ダイヤ付きだから婚約指輪か?
わーわーわーわーわーわー
「」
「あ」
「答えをくれ」
「う」
「まだ嫌いかな?」
「へ」
取り合えずだ
03.こくりと首を縦に振る
「という事で結婚式はわしの船だな」
「ボス?」
「ドレスはどれがいいですかね。」
「仙蔵?」
「とりあえず着物ものけるなよ」
「四郎さん」
「俺が一緒に歩くからな」
「みよちゃん」
「取り合えずだ」
私たちそっちのけで話をしているギャラリーがパンフレットを手にぴたりと止まる。
「「「「「まずあの馬鹿を血祭りに上げるか」」」」」
「文次か?とりあえずこいつ知ってるか?」
『あー、なんだ。急に。』
「ふふふ」
『教えてやるからの居場所教えろ』
「げ」
『そこにいるな。ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!この野郎何してやがる』
「ひぃ」
『てめっ自分の論文の期限いつか知ってんだろうな』
「仙様とりあえず助けて」
「無理だな」
「恐ろしい…って鬼蜘蛛さん?」
「潮江さん。」
『…鬼蜘蛛丸さん?すいません。を研究所へ送ってきてくれますか?論文が来週までなんです』
「明日の朝でいいですか?」
『出来れば今すぐが』
「大丈夫です。明日から私が一緒に詰めますから」
『お仕事は大丈夫ですか?』
「はい」
「明日からはとりあえず例の件を」
「「「「はい」」」」
怖い。
電話の先の助手と
目の前のギャラリーと
目の前でにこりと笑うフィアンセと
(一番恐ろしいのは最後の人だ)
「というわけで」
「は?」
「明日資料を持ってきますから1か月休み貰います」
「へ?」
「おー頑張れ」
「とりあえずちゃんも頑張れ」
「たーすーけーてー」
(一晩中寝てないのにさ、ギンギン野郎。論文を2日でかかしやがって)
(その後怒涛の式準備と)
(それ以上に)
「なにしたんですか?」
「何もしてないよ☆」
「ボス腹黒いですよ」
「とりあえずドレスはこれな」
「露出狂か、私は」
「これは駄目です」
「鬼蜘蛛丸さん…」
「こっちで」
あーあーこれから大丈夫かしら?
でも
「」
「なんですか?」
「幸せになりましょうね」
はいと言う私は今一番幸せだっ!