「さん??!!」
「むー」
「薬草とりに行って何してんですか」
「…痛い」
「痛くしてんです」
「伊作ちゃん」
「…駄目駄目。」
「ははは、はドジだからな」
「バカタレが。」
「むむむ」
「はいできた。女の人なんだから駄目ですよ」
「嫁の貰い手なかったらどうしようか…」
「何だそんな心配か」
「なによ、文次郎」
「俺がもらってやるさ」
「は?」
「私がもらってやってもいいぞ」
「へ?」
「私でもいいですね」
「い…伊作ちゃんまで」
「本気だぜ」
「あはははははははははは」
取り合えずなんだこの空気。
「服とってくるわ」
「はい。」
「寝てる?」
「と思います」
「みんな人をからかわないでね」
「ふふふふふ」
(仙蔵怖い)
居た堪れない。
居た堪れないからとりあえず乾いた笑いを発しながら障子に手を掛けて
うふふと笑いながら中に入って障子を閉める
と
目の前が天井になった。
(何なんだ今日はっ!!!)
挙句の果てには口まで抑えられるは体をがっしり抑えられるは。びっくりだ。
んーんー言いながらじたばたしても動かない。疲れた。厄日だ絶対。
ぐったりしていたらふーふーと獣のような息づかいが聞こえる。
やばい。変態か!!??と思ったら
利吉さん?
(首にあるのはくないよね?寝ぼけてる?)
「…んーんーんーんーんーんーんー!!!!!!!!!!!!!!!!」
「っ」
「んんんっんーんー!!!」
「すいません」
ぷはっと息をする。なにするんですか?私のことそんなに嫌いですか?
むっとしながら睨みつけるといつも通りの顔に戻る。
何でそんな顔するんですか?!
「痛いですか?」
「あー大丈夫です」
「そうですか」
「傷」
「あー、落とし穴に落ちまして。その時に」
「は?」
「ほら私ってここで唯一忍者じゃないでしょ?夜は危ないから伊作ちゃんとかと一緒に行って もらってたんだけど」
「すいません」
「いえいえ、では休んでいて下さいね」
「…」
がしりと腕を掴まれる。
それ以上に背中に布団。やばい。
こへとかだったら殴ったらどうにかなるけど
押しても叩いてもびくともしない。
流石フリーの売れっ子忍者。でもなんでこういうことするのよ。
私がそんなに身軽に見えるのかしら?
はたまた嫌がらせ?そこまで嫌いか!?
「なんですか」
「傷」
「は?」
「残りそうですか?」
「解りませんけど」
「誰かに貰ってもらうんですか」
「は?」
「貰ってもらうんですか?」
「ちょっと…熱でおかしくなりましたか?」
「いいえ」
「そのうち嫁ぐでしょうよ。貰い手あるかどうか分かりませんけど」
「そうですか?あの3人は」
「なんであの3人が出てくるんですか?」
「別に」
「利吉さんには関係ないでしょ?」
「そうですか?」
「大体、利吉さんは私のこと嫌いでしょ?」
「は?」
「どーせ私は男みたいな性格ですし、ガサツですし、色気もありませんよ。」
「ちょっ」
「嫌いなら無視して下さったらいいでしょ?」
「さん」
「どうせ老けて見えますし…でも私はあなたより年下です!!!」
「は?」
「もう退いて下さい」
「え?」
「私はそんな女じゃないです。」
「すっすいません」
ぽろぽろ泣いてしまうのが悔しいから着替えを取ってすぐに外に出ようとしたけど
腕をのけてくれない。
ぶんぶん振ってもむりでムカつくからのけて下さいという。
帰ってくるのは静寂で。
(でも何なのその目)
(獲物を狩る獣のような)
(獰猛で淫靡目は)
「さん」
「っ」
「泣かないで」
「泣いてません」
「可愛いですね」
「敬語やめて下さい。腹が立つ」
「じゃあ、」
なんだ、その声。顔が真っ赤になっていくのがわかる。
泣かないでと同じ声で言われて涙を舐められる。
「わわわわ」
「」
「何してんですかっ」
「何って」
「色っていうんでしょ?こういう技術。そういうのは他の人にして下さい。」
「は?」
「なんで実験台にするの。そんなに私が嫌い?」
「ちょっと」
「利吉さんなんて大嫌い」
「っ」
ボロボロ泣きながら私はそのまま半助さんと山田先生の部屋へ走っていった。
02.そして私はわんわん泣く
「まいったな」と頭をかく。熱のせいで朦朧としていてい
学園と戦場の見分けがつかなかった。
それ以前に彼女と的の見分けすらつかなかった。
泣かすつもりはなかったのに。
「色」という技。そう言われたな。まさにその通りだ。
嫌というほど忍びの技が身についていたか。
「大嫌いか…」
「ううぅぅぅぅううう」
「はいはい、泣きなさんな」
「やまだぜんぜい」
「はいはい、鼻かんで」
「はんすけざん」
「また、うちのバカ息子は」
「私は軽い女だと思われてんですかね」
「そーいうことじゃないと思うよ」
「じゃあなんで」
「若気の至り?」
「一晩の相手じゃないですか!!!」
「まあまあ、土井先生もからかわない」
「うー…忍術まで使うんですもの。どうでもいいんですよ」
「へ?」
「本気だったらそんなことしないでしょ」
「あれは仕事中毒だから」
「染みついちゃってんだよ」
「染みついてるくらい使ってるってことですか?」
「「う」」
「山田先生も?」
「うちの奥さんは忍者だから。」
「半助さんは?」
「私にはそういう人いません」
「シナ先生に弟子入り」
「「やめなさい」」
「だってっ!!!私綺麗でも可愛くもないし。どっちかっていうと男勝りで…ずっと男の人の中 で修行してたから。立ち振る舞いとか…そういうのなんか男の仙蔵に指摘されるくらいだし」
「(自分の魅力に気がついてないんだよね)」
「(ちゃん目当てって多いんですけどね)」
「(土井先生もでしょ)」
「(私は妹的な感じですかね)」
「ああ、綺麗になりたい」
ぼそりと呟いた瞬間「利吉か」と山田先生が云う。
「夜分遅くすいません」
「ちゃんをいじめてはダメだろ」
「苛めている気は」
「泣いちゃってるじゃないか。女には優しくと常々言っているだろう」
半助さんの後ろに必死に逃げると3人は何事もないように話し始める。
私は涙を目の前の着物で拭うと半助さんに怒られる。
「それと熱は大丈夫か?」
「だめですね。ここまで来るのに必死でした。」
「早く寝ないと」
「はい。だから」
むんずと腰のあたりを捕まえられる。ふわりと浮遊感。
しかしだ。私は米俵じゃない。
「はなせーーーーー」
「好きですよ」
「は?」
「では行きましょう」
傷ついた利き手と逆の腕一つで私を持ち上げる彼は間違いなく忍びで。
あー…私。駄目だ。
(こんなにも好きなんだ)