「すいません。」
「いや…そろそろ許してやってはくれないか?」
「許すも何も」
「段々憔悴してますからね。仕事はきちんとこなしてるみたいだけど」
「仕事中毒だからな」
「あはは」
「会わない理由でもあるの?」
「土井先生?」
「わしも気になる。」
「あー…うー…」
さん?」
「…利吉さん近くにいませんよね」
「うん」
「本当に」
「いないよ」





じゃあと私は2人の前に座り直す。



「えーとですね。もう怒ってないんですけど」
「そうなの?」
「はい。大体、お嫁行くような性格でも顔で生計立ててるわけでもないですし。学園長は死ぬ までここで働いたらいいって言ってくれたから、一生食いっぱくれることはないですし」
さん今の方が人気上がってるよ」
「化粧し始めてるからね」
「まっまあそれは置いといて…それでも顔に傷残ってますよね」
「申し訳ない」
「いえっもう気にしないで下さい。そうじゃなくて」
「?」
「皆さん仕事柄綺麗な方とあってるでしょ?」
「まぁ」
「特に利吉さんとか…」
「そうだろうね」
「だからその…私」
「あー」
「なるほどな」
「うー…恥ずかしい」
さんも乙女でしたね」
「だって可愛い人とかに会った後に…会いたくないというか。すごく辛いというか。私はこう いう性格だし…。そういう人と比べられたら居た堪れないというか」
「だって」
「だって?」












2人と私の間に何かが降ってくる。





















ま さ か!!!!!!!!














「嘘付き!!!!!!!!」
「っ(噂以上に可愛くなってる)」
「嘘じゃないよ。あの時はいなかったよ」
「はははは」
「頑張りたまえ」
「あー!!!!!!!!!!!!!!二人とも。」
「はははは」












パタリと閉められた障子。
逃げようにもがっしりと掴まれた腕。
必死に振り払っても振り払えない。







さん」
「っ。みないで下さい」
「こっち見てください」
「…や」
「私は」
「っ」
「あなたに会いたかった」
「…」









そのままぎゅっと抱きしめられる。
どどどどどどどうすればいいの!?
絶対顔が真っ赤だ。






「とりあえず。離して下さい」
「…嫌です」
「怒りますよ」
「もう嫌われてるから怖いものはないです」
「もっと嫌いになります」
「嫌です」
「お願いします」
「嫌です」
「…利吉さん」








そう言うと私の首筋に埋めていた顔をむくりと上げ
やっと名前を呼んでくれたと至極優しく笑う。



ああやめてくれ。心臓が止まりそうなほどドキッとする。
そして、壊れたんじゃないかと思うほどバクバクと動く。
寿命が縮んだ。…絶対縮んだ。













「可愛いです」
「いいですから、そういうの。もう怒ってませんから。離して下さい」
「そういうの?」
「無理して褒めたり手紙書いたり物を送っていただかなくていいですから。」
「…」
「もういいですから。会いたくないです」











といって利吉さんの顔を見る。






あれ?












怒ってらっしゃる?












ただでさえ眼は怖いんですから。と思ってすっと視線をそらした瞬間
顎を掴まれてぐっと前を見さされる。












怖い。








と本気で思った。ああこの人は忍なんだ。本物の死線をくぐってきた人なんだ。
いつも優しいけど本当は怖い人なんだと思いながら
私はきっとその目を見据える。













「好きなんです」
「嘘つき」
「どうしたら信じてくれるんですか?あなたは」
「…利吉さん?」
「ずっとあなたの事が頭の中を満たしていて、なのに本人には会えなくて。」
「ちょっ」
「やっと会えたら。…なんなんですかそういうのって。」
「痛っ」
「私は気が狂いそうなほどあなたが好きなんです」
「っ」
「いい加減あなたを下さい」
「…」
「お願いだから」















04.ああ神様。なんでこの人はこんなに美しい涙を流すのですか?











「好きです。愛してます。」
「利吉さん」
「お願いです。私を見て下さい」
「…う」
「会いたくないなんて言わないで」
「…っ」
さん」










ああそんな顔で見ないで。
あなたを拒んでいた腕をあなたの顔に回す。
ぽろぽろと綺麗な涙を流すあなたの瞳にキスを落としてぎゅっとあなたの顔を抱きしめる。







「泣かないで下さい」
「…」
「私もあなたが…」
「…」
「……好きです」











そういうとあなたは私の顔に手を添える。私は腕の力を抜く。

頬と頬と寄せる。









愛してますともう一度言ってあなたは優しいキスを私にくれた。