雨。その日も雨が降っていた。
(父上様と)
父上様は私の中で絶対だ。
幼いときに戦国の乱世で役立たずになった私を
人質にも出さずにいて下さった。
本当の母上様は死んでしまったから
今の母上様は私を育ててくれた。
実の子と同じように私を愛して下さった。
歳月は過ぎ私は強くなった。
その時心に決めたことがある。
この2人のために生き死のうと。
(それでも私は強いものを求めてしまう)
(強いものを見たら心が高ぶる。)
(それはあまりにも切なく禍々しい私の業)
のに
今はどうしてだろう
「父上様?」
全身に力が入らない。
「親方様っ」
「いやだ」
「っ」
「父上ぇぇぇ!!!!!!!」
私はいつの間にか気を失っていたらしい。
目をあけると風景が一変していた。
気がつけば独眼竜の顔が飛び込んでくる。
ああ大変だ。
私は…彼を見たらどうやら泣いてしまうらしい。
「気がついたか」
「う…っ」
「Don't cry.泣くな」
「ごめん。でも少しだけ」
「Hey.」
「誰にも言わないでね。」
「OK 誰にも言わねぇよ」
「っ…うっく」
「…」
「ち…父上…」
「…」
「わぁぁぁああああああああああ」
もうどれくらい経っただろう?
10分かもしれない
1時間かもしれない
分からないけど
その間独眼竜は何も云わずにいてくれた。
泣くのはもう終わりだ。
私は十分泣いた。
私しか立つ者がいない。
武田を守るためには
兵を守るためには
万民の安寧のためには
「ありがとう、独眼竜」
「No problem」
「私も立ち上がるわ」
「そうか」
「幸村の事はお願いするわ」
「OK」
私は立つ。
ばあやを呼ぶとばあやは悲しそうな顔をして用意ができていますという。
「赤具足。てめぇのか」
「もう二度と着るとは思わなかったけれども」
「HA.武田のおっさんが治るまでだ」
ああ、あなたは知らない。独眼竜
私は血を啜る化け物なんだ。
父上様が戻るまで私は私でいられるのだろうか?
私は私として帰ってこれるだろうか?
もうどちらが本当の私か分からなくなりつつあるのに
それでも私は立たなくてはならない。
魔王がこの世を草木も生えぬ世界に変えてしまう前に
我が民が幸せで暮らせる世を保つために
(独眼竜、あなたは何者なの?)
「独眼竜…いえ伊達殿」
「Ah…なんだよ急に。」
「御願が一つあります」
「としてか?武田としてか?」
「私として」
(父上様には頼んでいた。でももう無理で。)
「OK.聞いてやる。」
「もし私が私でなくなったら」
(幸村や佐助では無理でしょう)
「Why?お前がお前でなくなる?」
「そう。なくなったら私を殺してくれる」
「はぁ?」
「お願い。あなたしか頼めないから」
「crazyだな」
「フフフ」
「OK.Bad partyだが受けてやる。」
「ありがとう」
赤い紅い
紅の具足を身につける。
父上様より頂いた刀を腰にさし
鋼の籠手を身につける。
(これは何人の命を吸っているのだろう)
03.真紅の甲冑
「様」
「幸村いつまでめそめそしているのです。」
「その御姿…まさか」
「私はこの地を守る必要がある。佐助」
「はっ。」
「今日より私が父上様が御立ちになるまで私がこの国を守ります。皆にふれを」
「御意」
「ですが、様は」
「ですがも何もないのです。真田。あなたは為すべきことをなさい」
「某」
「よいですね。今はお家の大事。」
「…」
「龍…このものを頼みます」
「おめぇはどうする」
私は
そういって私は一呼吸置く
「馬鹿にしたあの男に借りを返しにいくわ」
生まれてきたことを後悔させてやりましょう