ちゃん」
「なによ、慶ちゃん」
「奥州の奥方がこんなとこでいていいのかよ」
「だって私奥方じゃないもん」
「はぁ?」
「私はね、慶ちゃん。側室で御手付きないもん」
「ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」













ここは…まぁ、敵中の敵。謙信公の居られる城下町で
横には前田の慶次郎。通称慶ちゃんがいる。




御茶を飲みながら相談していたらいきなり吐かれた。汚い。汚すぎるよ、慶ちゃん。とりあえず店の人にいってだいふきをもらいながら背中をさすってやる。





「汚いよ」
「何言ってんだよ。ちゃんが変なこと言うから」
「そう」
「でもまじで」
「まじで」
「(どうした伊達?)」
「だってあの戦いのあと頑張って父上様と闘ってやっと嫁げたと思ったら側室だよ」
「あ…そういえばそうだよね」
「そういえばって…慶ちゃんはわかんないだろうけど。側室は式挙げないんだよ」
「え?まじで」
「すっごい悲しかったのにさ。その晩も次の日の晩もあの人来ないの」
「戦があったんじゃないの」









そうなら私がここまで落ち込まないよという。



「正室様のところ行ってたらしいの」
「あー…」
「仲いいんだよね。いいことだけど。」
「んー…」
「どうせ子供も出来るだろうし」








結局そこなのだと自分で思う。
体の欠落は100%ではないにせよ、やってみないのに答えが出るわけがない。








「もういたたまれなくなってさ。」
「で」
「武田は乗り込みかねないし。他はそんなに友達いなくてさ。」
「おれに白羽の矢が立ったわけか」
「うん」
「命短しってね」
「恋してたのにね」
「まだしてんじゃないの」
「知んない」
「伊達も馬鹿だよなぁ、こんないい女」










そういうと慶ちゃんが肩を抱く。
私はまた泣いてしまう。




「辛いよ」
「そりゃそうだ」
「死んでしまおうか」
「それは駄目ですね。」











その声を聞いた瞬間涙が引っ込んだ。
ついで言えば心臓まで止まりかけた。









「けけけけけけけけけけけけけ」
「よぅ、謙信」
「美しき虎よ、久しぶりですね。」
「わーわーわー。」
「ははは。俺の後ろに隠れてどうすんだよ」
「すいませんすいませんすいません」
「ふふふ。あなたに何もしませんよ。」
ちゃん大丈夫だって」
「だって、謙信公強いんだもん。何回か戦ったから怖くて」
「おや。心外ですね、美しき虎。あなたの御蔭で何人が心奪われて戦いにならなくなったことか」
「ひーっ」
「うふふ。我が屋敷には来ないのですか」
「けけけけけけけけけ結構です。慶ちゃん」
「あんまりいじめてやるなよ。謙信。」
「あまりに可愛らしいもので。すいません」
「ほらほら、ちゃんも帰るんだろ」









と慶ちゃんに言われる。
帰る?どこに









私の帰る場所なんてないよと思いながら
慶ちゃんの背中をぐっと握りしめる。






「帰る」
「伊達に良しくな」
「うんん。武田に帰る」
「美しき虎?」
「奥州に帰る場所はないよ」
ちゃん。」






現に何のアクションも見えない。




「ちょうどいい機会なんだよ」
ちゃん?」
「このまま西へ行くのもいいかも」
「美しき虎。すべてから逃げてもいつかは」
「分かっています。」
「…」
「でも心と体がバラバラになりそうなのです。謙信公」
「かわいそうに。」
「あの人には優秀な右目愛する人愛する民頼れる仲間全てある。」
「そうでしょうか?」
「私は愚かだったのでしょうね。激情で全てを決めてしまって。」
ちゃん」
「慶ちゃん。父上様の云う事聞いてれば。」












恋をしなければ
あの人に逢わなければ













「私は幸せになれたかな」




というと目の前がいっぱいになる。
どうやら慶ちゃんが抱きしめてくれているらしい。




「慶次」
「んー」
「美しき虎を我が屋敷に置くことはできません。」
「そりゃそうだわな。」
「あなたがついて行ってやりなさい。一人よりずいぶんいい。」
「謙信公?」








頭の上に男の人にしては華奢な手が置かれる。





「美しき虎。真実を見ておいで。人は人を思うからこそ美しいのだと」
「はい」
「全ての出会いに意味があるということを」
「はい」













07.慶ちゃんと一緒















さてととの慶ちゃんが馬に乗せてくれる。
「自分で乗れるよ」と言ってもうんうんと言いながら自分が手綱を持っている。
横乗りなんてというより女の人のように乗せてもらったの初めてかも
そいうと「じゃあこれで決まり」とあの天真爛漫な笑みを浮かべる。






「あっいたいた」
「佐助」
「なーにしてんですか?様。」
「よー」
「前田の旦那も返して下さいよ。伊達と武田を戦わす気ですか?」
「?」
「あちゃー…かすがちゃんか」
「うちに言いに来てさ。御館様と真田の旦那がかんかんよ」
「とりあえず、半分以上は父上様のせいだから」
「あれは、御館様が様にあきらめて欲しかったが一心で言ったことだぜ」
「それが今回の火種だと父上様に言っておいて。」
ちゃん」
は日本海の荒波にのまれました。もう二度と浮上しませんって」
「あー」
「分かりましたね」
「了解」
「佐助」
「なんです?」
「奥州は」
「なにもいって来ませんよっと」
「そっか。じゃあ行こうか慶ちゃん」
「どこへ行く」
「とりあえず西へ」