「海ー!!!!!!!!」
ちゃん海好きだよなぁ」
「甲斐には海がないもの」
「奥州は寒いしな」
「慶ちゃん目つきやらしい」
「白いねえ。いや眼福」
「ここで死ぬか?」
「良い足だぜ、姉ちゃん」











ん?
足を這う手。




手??
手?????




とりあえず力の限り叫んで
とりあえず力の限り殴って

慶ちゃんの後ろに逃げる。








「死んだね」
「ななななななななななな。どこ触ってんですか」
「死んだって。砂ん中埋もれてんだぜ」
「いててて。おい前田の風来坊。なんだこの女」
「あっ生きてたか」
「あぁ?誰がこの女よ」
「いてぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「長曾我部の旦那。この人は武田の三の姫で伊達の嫁だ」
「は?あの最強の女?」
「伊達の嫁じゃないもん」
「いっいて。ちゃん痛い。」
「慶ちゃんの馬鹿」
「ふ〜ん。いい女じゃねぇか」
「へ」











そういうと変な男が抱きしめてくる。
むっ胸板が直接あたる。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
じたばたしても動けはしない。
大体誰だ?長曾我部って言ったよね…長曾我部?










「あんた。まさか」
「あんたなんてツレねぇな。元親でいいぜ」
「きゃぁぁぁぁ。慶ちゃん助けて」
「伊達の野郎もこんないい女隠しやがって。前行った時にはいなかったぜ」
「あの人のこと知ってるの?」
「おー。まぁね。あんた伊達の側室だろ」
「もう側室じゃない。」









そういうと豪快に笑ってじゃあ俺が貰おうかなとこれまた豪快に抱きしめる。





「離して」
「俺のもんになるって言ったら…ん?」
「あなた左目…」
「あー?眼帯は嫌だってか?」
「怪我してるの」
「秘密だ」







そういって笑う姿は誰かに似ている。
(誰?その答えは簡単で)





「あんたみたいないい女ならおれなら離したりしねぇのに」
「慶ちゃん助けて」
「あはは。はもてるからなぁ」
「この人も薄利多売っぽいもん」
「同類に好かれるかぁ」
「慶ちゃんっ」







怒ったらやっと奴の腕から解放された。
慶ちゃん遅い。と背中をばしばし叩いてやる。






「何でい。風来坊。少しぐらい良いじゃねぇか」
「だめだめ。怒ると怖いよ。死んじまうよ」
「なっ」
「はは。ちげぇねぇ。で、どうしてここまで」
「海」
「は?」





慶ちゃんの後ろで海見てみたかったのというと頭をぐしゃぐしゃとかき回された。





「ひっ」
「海は良いぜ。俺のとこ来るか?」
「いいです」
「船乗せてやる。」
「船?」
「おう。最新の樞も」
「うー…あー…」
「いってみるかい?」
「いいの?」
ちゃんの旅だからなこれは」
「じゃあ」







御言葉に甘えてというと元親さんは手を差し伸べる。








私は少し戸惑いながらもその手を取った。










08.手を差し伸べられたのはいつの日か












「ということで」
と武田の忍びが帰っていく。
様は今前田の風来坊とともに西へ行ったらしい。

前田の風来坊と一緒なら一安心だろう。






と思っていたら筆を持てと珍しく政宗様が云う。





「どうしたのですか?急に」
「長曾我部に文をやる。」
「あー」
「たぶんあいつの所にいるだろう」
「政宗様落ち着いて下さい」
「I'm so cool!どこがsoolじゃないって?」
「ご自分で行かれては?」
「…」
「とりあえず長曾我部には私から文を出しておきます。」








そういうとガシガシという音が聞こえる。







「愛しておられるのならそう伝えればよかったのです」
「あいつは側室だ」
「では。よろしいのではありませんか」
「小十郎。てめぇ」
様は元々奥に縛れる方ではありません。」
「I see. I see.わかっているさ。」
「それを飼い殺しのような事をしては」
「飼い殺しに見えるか」
「輿入れと名ばかりのご入城です。そのあと。ご慈愛されるわけでもなく。」
「Han」
「いつも泣いておられたのですよ。あなたの執務をこなしながら」
「…」









泣いていたのです。
あの強い方が。

日に日に顔色が悪くなり、痩せていかれたのですよ







「遊ぶのでしたらここまでにして下さい」
「All right.」












そういうと不機嫌そうに執務室から出ていく。
最近この繰り返しだ。






我が主は政宗様。
しかしあの大きな瞳からこぼれる涙が忘れられねぇ。
そしてあの言葉も。最強の女と言われた彼女から似つかない言葉だがあれが真実なのだと思う。





彼女もまたいろいろ背負っているのだろう。







「ふう…」




愛姫様がひどい方ならよかった。
(しかし素晴らしく聡明で可愛らしい方だ)
様が武田の姫君ではなければよかった。
(それはいっちゃいけねぇのは分かっている。)







様」








長曾我部も様のような女が好みだろう。
逆に奴の方が幸せかも知れねぇ。









でも。








俺は再びあの時のように寄り添う2人を見たいと
切に思うのだ。