手を取ったはずなのに
何故か布団の上に寝かされて
周りは男の人だらけで
とりあえずびっくりして叫びたかったけど声がうまく出なかった。
「兄貴。起きやしたぜ」
「ここは?」
「おー大丈夫か?あんた急に倒れたんだぜ」
「慶ちゃん…は?」
「薬もらいに行ってる。大丈夫か?水飲むか?」
「うん」
「旅の疲れが出たんだろ。あんまり飲み食いしなかったんじゃねぇの」
「気持ち悪い」
「わりぃな。男所帯でよ。とりあえず粥位なら作れるから。食べれそうか」
こくりと頷くとそうかと言ってにこりと笑う。
(…この笑顔)
「出来たら持って来てやる。そこで寝てろ。いいかてめぇら。客に手を出したら容赦しねぇぞ」
「あっ兄貴少し静かにしていた方が」
「あ?あー…そうだな。大丈夫か」
「うん…いえ、ありがとうございます。長曾我部殿」
「はんっ。その言い方は気にくわねぇ。やり直しだ」
「ありがとうございます。元親様」
「様っていうのは夜に付けてほしいねぇ」
「ありがとう。元親。」
「おう」
目を閉じる。
ここの人は何やら懐かしい。
奥州に似ているんだなぁと思う。
恋しいと きかれれば 恋しい。
会いたいと きかれれば 会いたい。
でも、あの人は私のことなんてもうどうとも思っていない。
ただの現地妻的なものだったのだろう。それを鵜呑みにした私が馬鹿だった。
大体私のような女が嫁ぐのが土台無理な話だったのだ。
あの人は美しく優しく聡明で。
私とは全く違う女の人だ。
恋は素晴らしいけど。こんなにも苦しいものか。
夜に聞こえてくる嬌声のせいで眠れぬ日々を送って
それでも役に立たないと私はいらない存在になる。
『いらない子。役立たず』
『母様?』
『あなたのせいで私は』
『ごめんなさい。』
「おい」
『ぶたないで母様』
「おい、」
はっとした
目の前に人がいたから。
泣いたのまた見られちゃった。
最近駄目だな私。弱くなりすぎてる。
と思ったら元親がギュッと抱きしめてくれる。
「はー。」
「くっ苦しい」
「あんた見てらんねぇわ。どうしてそんなに強いのにそれ以上に儚ねぇの」
「んーー?」
「おっわりぃ。ついな」
「私どれくらい寝てたの?」
「1刻ほどだな。粥食べるか」
「慶ちゃんは?」
「風来坊は甲板で遊んでる。」
「そう…か」
「で」
何で泣いてたんだ?と聞かないでほしい。
ぽろぽろと涙が出てくる。
「最近昔の夢をよく見るの」
「ふ〜ん」
「本当に母様に折檻される夢」
「あ?」
「私ね、幼い時に大病を患って子供が産める可能性がとても低いってお医者様に言われてるの」
「だから側室か」
「うん。政治的にも役立たずでしょ?だから母様によくご飯もらえなかったり折檻されてたの。今思えばもう病気だったからかもしれないけど。母様死んで父上様に連れられて入城した時もっとひどい事されるって思ったんだけどみんな優しくて。だから少しでも役に立てるようにって。強くならなくちゃって」
「…」
「でもやっぱり私は駄目だとか…色々考えてたらもう居ても立ってもいられなくなって。バカだよね」
「まー。」
「ん?」
「いいんじゃね。泣きたい時に泣いて食いたい時に食って。寝たい時に寝たら」
「うん」
「とりあえず今は寝ろ。」
「うん」
「寝たら何か食え。」
「元親。」
「あ?」
「ありがとう」
「いーや。」
そういって頭を撫でてくれる。あったかいな。そう思えたら今まで考えていたことがすっと落ちる。
久し振りかもしれない。こんな穏やかな気分になれたのは。
09.涙が止まった瞬間
夢の中のあなたはすごく優しく笑っていて
私もすごく穏やかに笑っている。
分かっている。これは夢だ。
でも逃げてはいけない。
でも私は私だ。
泣くし笑うし食べるし寝る。
もしだめならこの世界を旅してみよう。海もいいな。
でも出来るなら
「政宗様」
あなたと