「おっお客人困りますぜ」
「まあまあまあ。みんなの分も作っていから。食堂行って食べてらっしゃいな」
「まっまじです…いやいやいや。まだ御体が本調子じゃ」
「大丈夫。あっここ?」
寝てたらやけに騒がしくなってきた。
目をあけて回らない頭をもたげてみると入り口が開く。
白い割烹着のがおはようと言って笑ってやがる。
(可愛い)
「おはよう。朝ご飯作ったからおきて。」
「あー…?」
「元親?」
「んー…」
「ちょっ。何寝ぼけてんの」
「良い匂いだな」
「へっ変態」
とりあえず顔が近づいてきたので
そのまま抱きしめる。あーいい。朝から女の匂いっていうのはまた良いもんだぜと思っていた ら思いっきり叩かれる。拳じゃねぇ。刀だ。風来坊め。
「はいはい。起きた起きた」
「慶ちゃんおはよ。」
「ちゃん男の部屋に一人ではいっちゃダメだろ。男はみんな狼なんだぞ」
「は〜い」
「てめっ。も、ちょっとこい」
「やだよ。私はみんなにご飯あげないと」
「あ?体はどうなんだ」
「大分元気になったよ。ありがとう元親」
「俺が薬持ってきたんだぜ」
「うふふ。ありがとう慶ちゃん」
パタパタと走っていく。新婚みたいだなとぼそりと言ったら再び頭に激痛が走る。
「いてぇな」
「良い顔になってる。あんな顔初めて見た」
「そうかよ。いいなぁ。あの子。」
「伊達の旦那に殺されるよ」
「だって手放したんだろ。俺。頑張っちゃおうかな」
「手紙見ただろ」
「あははは。あんなの送る位なら自分で来いっつうの」
「『が立ち寄ったら連れて来い。手を出したら殺す』か。」
「本気のくせに青くせぇな。いっちょ仕掛けるか」
「なにする気だよ」
「命短し恋せよ俺ってね。」
羽織を羽織っていると再びが顔を出す
「何だよ。着替え中だぜ。情熱的だな」
「男の裸くらい見慣れてるわよ。」
「あぁ?っておい。」
「ちゃん」
「えへへ」
「熱があんじゃねぇか。」
「大丈夫よ」
「何が大丈夫なんだよ。ほら」
「え?きゃぁぁあ」
「ここで寝てろ。」
「わっ分かったから降ろして。恥ずかしい」
「おとなしく寝るか」
「うん。寝るから」
「よし。」
ペイっとさっきまで俺が寝ていた布団へ下ろすとごめんねと苦笑いをするが居る。
やべぇな、可愛い。
とりあえず布団を掛けてやると腕を持たれる。
「この船、どこへ行っているの?っていうか船に乗ってたんだね。」
「船初めてだろ」
「うん。もっと揺れると思った。」
「病人が乗ってるからな」
「うふふ。ありがとう」
「ほらほら寝た寝た」
「答えてもらってない」
「あー」
「元親」
「奥州。」
「やっぱり。」
「お前たちがつく前に文が来てな。」
「んー…」
「とりあえず連れて行ってやる。逃げ回っても仕方がないだろ」
「でも、元親に会えたからこの度は有意義だったかもしれない」
「そーか?」
「うん。いつかは合わないといけないから。」
「ほらほら。ちゃん。その前にちゃんと体治しなさい」
「は〜い。慶ちゃんもいろいろありがとう」
といって彼女は意識を手放す。
「で、風来坊。」
「ん?」
「の病気ってのは」
「医者の見立てでは体かかなりポロボロらしくてね。」
「治りそうか」
「おとなしくしていたら。でも奥州につくまでにはまだ本調子にはならないんじゃない」
「そーか。」
「その旨は龍の右目に伝えたんだけど」
「さて、どうなるか」
ほそっこい腕
蒼い顔
「あまり無理をさせない方がいいな」
「そうだな」
「…まぁ、俺も動くか」
それより飯だと言って肩を叩く。
そうだなと風来坊。
とりあえずは
今は
(元気になれよ)
10.弱々しい最強の女
「やっぱりか」と政宗様が云う
「I see.あの海賊の野郎」
「ここまで運んで来るらしいですが」
「あ?」
「…いつもより時間がかかるそうです」
「小十郎」
「様がお倒れになったそうです」
「…」
「船を遅く走らせるためやむなしと」
「I see. I see.」
「それでは」
というと政宗様は静かに立ち上がる。
ああこの方はなんと不器用なのだろうか
「政宗様」
「なんだよ」
「少しはお休みください」
「…」
「戦支度はこの小十郎が致します」
「…」
「…」
「分かった」
ほとんど寝ていないだろう主君は小さくいって執務室から出ていく。
様が倒れたと一報があった瞬間やはりと思った。
あの方もまた自分を保つため体を酷使していたから。
(俺の一生の不覚だ)
長曾我部からきた文と
前田の風来坊からきた文と
(続きは言えない)
それまでにすべてが終わればいい