「おっ起きてて大丈夫か」
「うん。もう大丈夫なのに。」
「また倒れられたら困るからな」
「寝ててばかりだと申し訳ないし」
「客なんだから気にすんな」
「あら、積み荷の間違いじゃなくて?」
「へっちげぇねぇ。」
「奥州まであとどれくらい」
「あと2日くらいじゃねぇかな。」
「そう。」
「何たくらんでるんだよ」
「お願があるの」
きらきらした目で言うと言ってみろよと言われる。
一通り言ってみる。
で、答え。
「だめだ」
「御願っ」
「だーめーだー」
「元親」
「うっ」
「おねがい」
「…危ないと思ったらすぐ止めるからな」
「うん」
「っていうか今思ったけど。」
「?」
「すげえじゃじゃ馬」
「今更でしょ」
そういって笑うと元親が髪を撫でる。
この男はやさしい。
「元親って鬼が島の鬼かと思ったら」
「あ?」
「すごく優しい。」
「っ」
「ありがとうね。」
「。絶対無理すんなよ」
「うん。」
「もしだめなら俺が嫁にもらってやる。」
「あはは。取り合えず一国傾ける樞を控えてくれたら考える。みんな困ってるよ」
「そりゃ難儀だな」
「ふふふ。謙信候の云った通りだ」
「あ?」
人は人を思うからこそ美しいのだと
全ての出会いに意味があるということを
「私はあなたに会えてよかった。」
「あー」
「ありがとう」
「けっ。こそばっかゆい」
「ふふふ」
「飯。おいとくから」
「ありがとう」
「(こいつ。笑う顔が柔らかくなって一段と…)」
「どうしたの」
「なんでもねぇ。」
「さて、どうなるかな」
「ずいぶん他人事だな」
「普通なら殺されるし。まぁ、返り討ちにしてやるけど」
「いうねぇ。でも、本当に強いのか?」
「まぁね。」
私は強いけどとてももろい。
「なんだっけ。昔さ姉上様の本で源氏物語っていうの読んだことあってね。」
「あー」
「良く覚えてないんだけど紫の上っていうのが私に似てるかなぁって」
「似てねぇだろ。」
「見目とかじゃなくてよ。性格とかじゃなくて。立場が?」
「あー…それなら」
「なんか腹立つわね。まぁいいわ。でも、やっぱり本は本。私は私。私はこのまま死ねないも の。なんか中途半端なの嫌いなの。武田の心意気忘れてたわ」
「なんだよそれ」
「白黒はっきりつける。」
「けっ」
「はっきりつけるわ。巻き込んでごめんね、元親。うまくいったら全部説明するから」
「上手くいかなかったらどうすんだよ」
「ここの賄方で雇って」
「けっとんでもねぇ女だな。あんた」
「ふふふ。甲斐の女をなめちゃいけないよ」
「じゃじゃ馬」
もろいからこそ
ぶつかることを恐れていた
でもぶつからなくては始まらない事も理解しあえない事もある。
(何年父上様と幸村のどつき漫才を見ていたのだろう)
(ただの馬鹿じゃなかったんだね)
「さて上手くいくかな」
「勝算ないのかよ」
「7対3でやばい?」
「勝算低」
「五月蠅い。」
「御二人さん仲がいいのはいいけれども少しやばいよ」
「あ?航路は安定してるし順調だろ」
「ちゃんにお迎え」
「へ?」
と言った瞬間
「様」と背後から声がした。
「なんだてめぇ」
「様ご無事でしたか」
「元親、大丈夫。佐助何でここに?」
「知り合いかよ」
「ってことはまさか…」
「あたりぃ」
11.あんたがここにいるという事は。ああ、頭が痛い。
「赤?」
「なんだそりゃ」
「いんや。」
「?」
「赤青入り乱れての大乱闘です、様」
「え?」
「大将がキレちゃって☆」
「☆じゃないわよ。幸村は?」
「旦那は独眼竜と闘ってるんじゃないかなぁ」
「元親〜。」
「なんだよその顔。」
「私このまま旅に出たくなった。」
「なぁ青赤って何だよ」
「うちの実家と奥州のこと」
「という事でご同行頂きましょう」
「佐助。私を無理やり連れていけると思ってんの」
「無理だねぇ。だから素直に」
「じゃああんたも手伝いなさい。」
へ?という顔をする佐助に私はにっこりほほ笑んだ
(この顔をする様はロクでもないんだよな)