「…痛い」と私はいいながら式神を切っていく。
「取りあえず逃げる?」
「戦う」
「俺もジャンに賛成」
「私戦えないじゃんっ!!!」
「だから!」
「うぉっ」
ありえない速さで戦う二人と
ジャンに抱かれてそれ速さの中にいる私と
(酔ってきた)
バタバタ倒れていく傭兵さんと
(ご愁傷様です)
「っと」
「優大丈夫?」
「も大丈夫か?」
「俺は?」
馬鹿の言う事を綺麗にスルーして
私は怪我をした優の腕を握る。
「掠り傷だよ」
「まぁ、一応。よっと」
「おっ」
紙をぺろりと掛けてそのまま印を結ぶと
跡形なく綺麗に傷跡が治ってくれる。
(ナイス、私)
「さんきゅー」
「今回はバックアップ(になっちゃったん)だから、なんかあったら直ぐ言ってね。」
何が気に入らないのか
私を抱きかかえたまま
(早く降ろしてくれれば良いのに)
其の間中凄い殺気を醸し出すジャンを無視して
優の治療と自分の治療を進める。
「ジャン」
「…なんだよ」
「私の鞄知らない?」
「そこいらに落ちてんじゃねぇーの」
「じゃあそこいらとやらに連れて行ってよ」
めんどくせぇなといいながらジャンはクローゼットへ近づく。
(良い奴なんだか嫌な奴なんだか)
トラベルバックから着替えのシャツとパンツを取り出して着替える。
「このまま?」
「いや、取りあえず情報を流すか?」
「そーねー」
ウエストポーチに
必要物品を詰め込んで
黒いグローブをはめて
長い髪を一つに束ねる。
「っ」
「何?」
「そのままは不味い」
「は?」
「そのままで良いんじゃねぇ?」
あっけに取られたのは一瞬で
直ぐに首筋を隠して
私の顔は真っ赤になる。
「ままままままままま」
「ショールとかねぇの」
「恥ずかしがる事じゃねぇんじゃねーの」
「いや、日本人にしたら恥ずかしい」
そんな遣り取りを無視して
殺気の銃撃戦で壊れた鏡の前に立つ。
(まじか!!!)
「ジャンッ!!!」
「ちゃんセクシー!!!」
「優、そこら辺にショールあったでしょ」
「おー…これ?」
ぺいっと投げられて
私はそれを首に巻こうとした瞬間
ありえない速さでジャンが背後に回って
それを制し始める。
(ぎゃーす)
「離して」
「良いじゃんそのままで」
「やだっ」
「セクシーだぜ」
「んっ!!!ちょっ」
「白い肌だから良く目立つ」
「っ!!!」
再び付けられて
私は優に助けを求める。
が、目の前には人はいなくて
(逃げやがったな)
「折角だから」
「信じられないっ!!!」
「このまま」
「私は仕事するのっ!!!」
「じゃーおわってからにするか」
「な・に・が!!!」
取りあえずばっくれた優に八当たりしようと
心に決めて私はショールを首に巻きつけた
沈む沈む夕日の果ては05
「っち」
「大体、ジャン!」
「あぁ?」
「そろそろ身を固めなさいよ。もう良い年でしょ」
「…お前は?」
「晩婚化」
「都合の良い話で」
そういっていると
遠い方で銃撃戦の音
(優かな?)
「走れるか?」
「負ぶって連れててって」
「…」
「早くっ」
「あー…」
「何よ」
「お前の事」
「ん?」
「好きだ」
「は?」
この獣人は頭までおかしくなったのだろうか?
取り合えずだ
(というか、この場面で告白か?!!!)
「って!!!」
頬っぺたを思いっきりブッ叩いてやった